横浜ユーラシア文化館 東西文化が出会う横浜で歴史と芸術を辿る「山本博士コレクション」1/12(月・祝)まで開催中
横浜ユーラシア文化館
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横浜ユーラシア文化館では、2025年10月11日(土)から2026年1月12日(月・祝)まで、企画展「山本博士コレクション 横濱 東西文化のランデブー 眞葛焼、横浜写真から横浜彫刻家具まで」が開催中です。
幕末の開港以来、横浜は東西文化が交差する舞台となり、独自の美と技術が育まれてきました。
同展では、横浜出身の実業家・山本博士氏が蒐集した貴重なコレクションから約200点を厳選し、横浜の文化の深層に迫ります。
◆横浜の歴史の伝道師 山本博士氏はどんな方?
山本博士(やまもとひろし)氏は、横浜で生まれ育った実業家で、誰もが知る老舗洋菓子店「横浜モンテローザ」を経営する株式会社三陽の代表です。
横浜にゆかりのある文化財を国内外から蒐集。コレクションは1,000点を超え、郷土の歴史や文化を次世代に継承するために、惜しまず寄託・公開されています。

横浜市中区は関東大震災と空襲で多くの文化財を失いましたが、「街の個性は歴史に基づいたものが宝。その宝を街の発展に活用する。」「横浜を誇りに思うものを次世代に伝えていくことを念じてコレクションしている。モノだけではなく、精神的な部分を伝え若者の育成に尽力できれば。」という趣旨のメッセージを山本氏が語られていたのが印象的でした。
その想いで蒐集された、眞葛焼や横浜写真、彫刻家具、洋楽器など、横浜にゆかりのある文化財が一堂に会しているのがこの企画展です。

◆第1部 眞葛焼 その誕生と盛衰
明治時代につくられた日本の焼き物で国の重要文化財3点のうち2点が、横浜で焼かれた眞葛焼(まくずやき)だということをご存知ですか?
眞葛焼は、当時、外国人に人気で、ほとんどの作品が海を渡ってしまい、さらに、大空襲で職人と窯を焼失してしまったため、幻の陶芸となってしまいました。
そんな貴重な眞葛焼が50点も並ぶ今回の企画展。その第1部では、世界を驚かせた「眞葛焼」の誕生と盛衰が紹介されています。


まず、一歩踏み入れて思わず息をのむのが、初代 宮川香山(こうざん)による作品。明治期の横浜から世界へ発信された芸術の象徴と言えます。
開国後の国策の影響もあり、欧米向けに作品を多く制作し、中でも高浮彫りの技法で表現された立体的で写実的な花鳥や龍は、まるで彫刻のようなリアルさ!
繊細でありながら迫力があり、命を宿しているかのような造形美は、眞葛焼の代名詞となり、海外の万博でも高い評価を得ていました。

その後、1882年以後の初代香山の代表的な作風となった「釉下彩」(ゆうかさい)による磁器づくりが中心となり、晩年には、初期の作風とは異なる印象を受ける、侘び寂び(わびさび)を感じる作品を生み出しました。
作風の変遷を追うことで、明治期の横浜が持つ国際性と、時代の流れが感じられます。


◆第2部 横浜写真と外国商館
第2部では、幕末から明治にかけての横浜を写した彩色写真や外国商館の記録から、国際都市としての横浜の姿が浮かび上がります。幕末に欧米の写真家が来日した横浜は、写真技術が伝播した土地でした。
絵付けや蒔絵という日本の伝統技術が、西洋の写真技術と結びついた「横浜写真」を見ていると、開港都市としての当時の横浜の姿が鮮やかに蘇ります。


例えば、今の山下公園付近を写した写真には、洋装の人や洋館や馬車が写っていて、そこはまるで異国のよう!
とはいえ、それは“実際の”横浜を記録した写真であり、当時の人々の暮らしや横浜の街並み、その空気感を鮮やかに伝えてくれています。


◆第3部 横浜彫刻家具の世界
和洋折衷の美を極めた「横浜彫刻家具」は、明治中期から昭和初期にかけて、欧米人向けの装飾性の高い木彫り家具として人気を博しました。
宮彫師(神社仏閣や宮殿の欄間などに施される彫刻を専門とする職人)たちが腕を振るい、西洋人の東洋趣味にあわせて、アイリス、龍、猛禽類、花鳥風月をモチーフに、箪笥、棚、デスク、椅子などに彫りこまれました。


実用性と芸術性を兼ね備えた逸品ばかりで、「鳳凰桜意匠飾り棚」など、細部まで彫り込まれた装飾はまるで美術品です。
輸出用であったため、国内に残されているものが極めて少なく、貴重な展示品が並びます。

◆第4部 眞葛焼 万華鏡
眞葛焼は、1871年(明治4年)に窯を開いた初代香山から、1945年の三代香山まで、様々な作風の作品を生み出しました。
会場3階では、眞葛焼の時代別の変遷が辿れ、会場2階では、京焼の陶芸の先輩、野々村仁清(ののむらにんせい)を真似た作品など眞葛焼の多彩な魅力が楽しめます。


◆まとめ
初代香山は開港をきっかけに京都から招かれ横浜に移り、そして、三代香山は大空襲で亡くなり窯も滅びました。
眞葛焼には、幕末の横浜の歴史が凝縮していると言っても過言ではありません。
その他、山本博士コレクションには、勝海舟の書状や横浜の洋楽器、芝山漆器、「ペリー提督横浜上陸図」など、どれも横浜の歴史と文化を物語る貴重な文化財ばかりが並びます。

同企画展で感じ取った時代背景を、会場から徒歩圏の横浜中華街や開港広場などを散策することで、リアルにリフレインしてみるのもオススメです。
横浜の記録や歴史を未来へ託す山本氏の想いを重ねながら、横浜の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。
関連イベント
2025年12月6日(土) には、ミニ講座「山本館長、眞葛焼を語る」、
2026年1月10日(土)には、記念講演会も開催されます。
この機会に、直接、山本博士氏の言葉に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

概要
日程 2025年10月11日(土)~ 2026年1月12日(月・祝)
※休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日が休館)、年末年始(12月28日~1月3日)
会場 横浜ユーラシア文化館(横浜市中区日本大通12)
時間 9:30~17:00 券売は16:30まで
観覧料:一般800円、横浜市内65歳以上・小中学生400円
※11月15日(土)・11月16日(日)は横浜スタチュー・ミュージアムのため観覧無料
<お問い合わせ>
横浜ユーラシア文化館 TEL:045-663-2424
URL
港ヨコハマに流れ着いた引っ越し多めのバガボンド。
MBTI診断は冒険家型。趣味は旅行(建築探訪、史跡巡り)、数独、野球、相撲、洋画、洋楽。
好きな横浜スポットは、ナイターに浮かび上がる横浜スタジアム、街中のオアシス元町公園水泳場。
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