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歴史散策の疲れを癒す一杯の紅茶。
極上の満足とくつろぎを求めるなら馬車道のこの店へ。

サモワールという店の名に、なつかしさを覚える人も多いだろう。サモワールとは、ロシア式の湯沸かし器のこと。用途からいえばケトルですな。ただのケトルではないのは、それが19世紀のロシア文学に欠かせない小道具として、ドストエフスキーからチェーホフに至るまで、あらゆるロシア文学の作品に登場すること。チェーホフの戯曲には登場人物がサモワールをプレゼントしたり、逆に抵当で取られてしまう場面があったが、そのくらいサモワールはロシア人の生活にとって欠かすことのできないものだったということがわかる。そのサモワールである。別に店内はロシア風でもなく、ドスト氏の肖像が掲げられているわけでもないが、サモワールと名乗るだけあって、紅茶がうまい。ロシアンティーのうまさは、大量のお湯を沸かすサモワールから淹れているからで、そのつど、ちまちま注ぐ程度のやかんでは湯の力が弱いのだという説を、その昔、ロシア料理店の親父から聞いたことがあるが、この店のうまさはその伝であろうか。付け加えるなら、オムライス。こちらは日本発祥の料理だが、これもまたやけにうまく、メニューも豊富。はす向かいにある神奈川県立歴史博物館を訪れた折りにでも、ぜひ立ち寄りたいところである。

SAMOUAR(サモアール)馬車道店

横浜市中区弁天通4-67-1
営業時間:11:00~21:30
定休日:無休
みなとみらい線「馬車道駅」より徒歩1分、JR「関内駅」より徒歩7分

供されるのは、ワンランク上の上質な香りと時間。
そのひとときを存分に楽しみたい。

気をそそられるキャッチーな店名である。大学院というからには、という期待をもって店内に入れば、まさに期待にたがわぬインテリアと雰囲気である。コーヒーを注文するとたしかに純喫茶でしか味わえないような豊潤なコクと香り。たいてい10グラム程度のコーヒー豆しか使わないところ、この店では20グラムの上質な豆を使ってサイフォンで淹れるのだという。
よい純喫茶には、たいていうまいご飯ものがあるものだが、この店もご多分にもれず、パスタからカレー、ハンバーグ、仏蘭西風エビフライなど充実し、かつ、サンドイッチやクロックムッシュまである。フランス風のものが多いが、そこはやはり店名のルミエール・ド・パリ(パリの灯)に由来するのだろう。ちなみに20世紀を代表するフランス人作家プルーストの『失われた時を求めて』では冒頭、主人公を一気に過去の回想に引き込むマドレーヌと紅茶が有名だが、クロックムッシュもまたこの高名な小説に登場するフランスの軽食の典型である。かつて純喫茶には、こうした名物や雰囲気が生み出す独特な時間が流れていたものである。そして店に集う恋人たちの密やかな時間も。クロックムッシュと香り高いコーヒーで、しばし追想するかつての『失われた時』。この店であなたなら何を選び、どのような時を振り返るだろうか。

コーヒーの大学院 ルミエール・ド・パリ

横浜市中区相生町1-18
TEL 045-641-7750
営業時間:[月~金] 9:30~21:30[土] 10:30~21:30
定休日:日曜、祝日

絵になる喫茶店は、誰が訪れてもさまになる純喫茶。
元町や外人墓地散策の折りに、ぜひ立ち寄りたい。

時間というものは不思議なものだ。あわただしくしていると、ただ過ぎ去るばかりだが、場所によっては急に質量を増すかのようにゆっくりと流れ始める。かけがえのない時間を大事にしたいのであれば、純喫茶という場所がふさわしいゆえんである。そんなとき、この『モデル』ならうってつけだろう。お手軽なカフェ全盛の時代にあって、昔ながらの穏やかな時間が流れる純喫茶だ。本物の煉瓦を積み上げたパーティーションが、あたりまえのようにテーブル席ごとにしつらえられ、人はそのがっしりとした煉瓦に守られるようにくつろぐことになる。窓辺のテーブル席につけば、レースのカーテンごしにゆきかう人びとの姿が見え、銅製のランプシェードの灯はどこまでもやわらかい。これほど豪奢な造りの純喫茶は、当然ながら、もはやあたりまえでなく、特別なものだ。そのオーラが、いくたの映画人や出版人を惹きつけ、リメイクされた『時をかける少女』(仲里依紗主演)や雑誌のグラビアの舞台として使われてきた。いわゆる『絵になる』喫茶店なのである。とはいえ、この特別な店は、気取っているわけでも浮ついているわけでもなく、家族経営の、ごく気さくな店だ。いつ、だれが入っても、平等に接してくれる。港の見える丘公園や外人墓地散策に出かけるなら、ぜひ立ち寄りたい。

純喫茶 モデル

横浜市中区吉浜町1-7
TEL 045-681-3636
営業時間:[月~日] 10:00~17:00
定休日:不定休

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