荘厳なまでに美しい圧倒的なバックバーの前で、
酒神ディオニソスに乾杯する。飲むべし。そしてまた飲むべし。
ディープな夜の横浜というなら、この店をおいては語れまい。横浜は中区福富町にあるバークライスラーである。辻ごとに立つキャッチ氏のお誘いを聞き流しつつ、黄色の電飾看板の下にたどりつく。急な階段を登り、葡萄のレリーフが施された重厚なドアを開けると、壁面すべてがバックバーという壮観にまず打たれる。年代もののブランデーやウイスキーはもちろんのこと、レアな銘柄から、人気のスコッチやシングルモルトまで、これだけ揃っているバーは横浜でもここくらいだろう。バックライトで妖しく光る圧倒的なボトルのシルエットはほとんど荘厳と思えるほどの美しさだ。キャッチの誘惑を振りはらってこの店にたどり着けたことを感謝し、酒神ディオニソスに帰依しよう。まずは一杯。あらためてグルリと店内を見れば、天井から床にいたるまで、酒精の満ちる空間というべきか。カウンターに向かってよし。テーブル席に座ってもよし。5年10年でこうした雰囲気は作れるものではなく、たっぷりとした時間の熟成が必要だっただろう。聞くと創業は1950年。横浜最古と言われているそうだ。エイジングを経て、味わいを深めるものはスピリッツだけでなく店の醸し出す雰囲気も同様だろう。居心地のよい時間がゆったりと流れていく。
横浜市中区福富町西通5-5
TEL:045-251-9966
営業時間:18:00〜翌2:00
定休日:水曜・第3木曜
※掲載の内容は、記事公開時点のものです。
変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
都橋のした、大岡川は流れる。
あたかもアポリネールの詩のごとく、
また宝石のごとく、人をしてクラフトビアに惑溺させる。
夕暮れ、初めて都橋をわたる人は、そばに立ち並ぶ小さな店の灯りの数々にきっと感嘆することだろう。早い時間から飲んでいる酔眼には、それは妖しくきらめく宝石のごとくに見えるかもしれない。実際、その店は、木製のドアを引き開けると、光がこぼれるひと粒の宝石のようにあらわれる。ウナ カサ デ グビグビ エルヌビチノ。いわゆるビアバーである。好みの地ビールを所望し(あるいはおすすめをクラフトビア・アソシエーション理事でもある店主の加治さんにたずねて)窓側のカウンターでかざしてみれば、深い地ビールの輝きで満たされた大ぶりのグラスもまたひと粒の宝石である。眼下に流れる大岡川をながめ、ぼんやりと物思いにふければ、ここはまるでかつてフランスの詩人が歌ったミラボー橋のごとくの舞台装置ではないか。都橋のした、大岡川は流れる、そしてわたしたちの恋も。などと妄想にふけることもできる絶好のロケーションなのだ。あたりのネオンできらめいている川面を眺めながら、杯を重ねる贅沢な時間の持てる店はいかに横浜といえども、そうざらに望めるものではない。
横浜市中区宮川町1-1 都橋商店街117
TEL:045-231-3626
営業時間 [月・水・木]17:30〜22:30 [金]17:30〜23:30
[土]15:00〜23:30 [日]15:00〜20:00(夏季は〜21:00)
定休日:火曜(他に店主がブログで告知した日)
※掲載の内容は、記事公開時点のものです。
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夜明けまで続く居心地のよさ。
ウイスキーやカクテルをゆっくりと楽しみたい夜、
ずっと飲んでいたい夜に訪れたい。
朝までやっているバーがいいとは限らないが、朝まで客がいる店は、まぎれもなくいいバーである。時間を忘れて飲めるだけの居心地のよさがその店に備わっている証しだから。ウイスキーやカクテルをゆっくりと楽しみたい夜、あるいは、ずっと飲んでいたい夜、この店を訪れるがいい。すると、オーナーバーテンダーの片野さんか、あるいはまだ若いバーテンダーのどちらかがにこやかに出迎えてくれるだろう。たとえ混んでいても、一人分くらいの椅子は上手に開けてくれるし、気配を察した先客が席を譲ってくれたりもする。朝までやっていて、なおかつ、いいバーというのは、そういう雰囲気が自然と醸し出される店なのだ。何時に入っても出てくるセンスのいいお通しは、見た目も美しく、アルコールがいっそう進んでしまうおいしさ。止まり木でますます腰が落ち着いてしまい、始発電車の時間を迎えることになってしまうだろう。
横浜市中区太田町2-31-3コーポサンライフ太田町203
TEL:045-228-7377
営業時間18:00〜翌5:00
定休日:年始以外無休
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半世紀以上、夜の横浜を生きてきた。
そのバーテンダーがステアするウイスキーは、ベルベットのようにやわらかい。
創業1964年。横浜で最古のオーナーバーテンダーの店、アポロ。いまや横浜で最古参となったバーテンダー石原さんは、東京オリンピックの年に開いた店だからね、次の東京オリンピックまでやるさ、とアイスピックを刻みながら笑う。その氷で冷やし、ゆっくりとステアして差し出されたウイスキーは、まるでベルベットのようにやわらかい。横浜ゆかりの映画監督や作家などが常連でいりびたっているが、そんなことを知らずにふらりと入っても、居心地はすこぶるよい。どんな客にも酒を注文する以外に、よけいな気づかいをさせないのが長年磨いてきたバーテンダーの腕というものなのだろう。ジュークボックスでオールディーズがかかるバーも、横浜ではこの店以外あと数軒だけとなった。大人が、大人のままでひっそりと棲息するバー、その筆頭が横浜ではこの店、アポロだろう。
横浜市中区曙町4-45
TEL:045-261-2576
営業時間19:00〜翌3:00
定休日:火曜日
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マッキントッシュのプリアンプにアルテックのスピーカー。
かけるのはアナログ盤のブルーズだけというバーがある。
選び抜いた銘柄のウイスキーだけを置き、味が変わったと思えば、それがどんなに売れセンのウイスキーでも店では扱わない。そんな絵に描いたように頑ななバーが、関内・住吉町のひっそりとした路地裏にたたずむ。バーKC。横浜でかれこれ20年やってきた、知る人ぞ知る店だ。十字架を模したドアノブをつかみ、分厚いステンレスのドアを開けると、そこは5、6人も入ればいっぱいになってしまうカウンター。いきおい客はバーテンダーと相対して、バックバーを眺め、酒を選ぶしかないという寸法だ。目に入るものは、ボトルとオーディオとアナログレコードのみ。ケリーという米国製真空管パワーアンプがマッキントッシュのプリアンプと組み合わされている。その真空管アンプのせいだろうか、流れる音はブルージーでありながらも温かい。ちょうどこのバーの居心地がそうであるように。
横浜市中区住吉町6-74
TEL:045-212-2300
営業時間18:00〜翌1:00
定休日:日曜・祝日
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神奈川県横浜市中区相生町4-66 第15須賀ビルB1F
TEL:045-228-8660
営業時間17:00〜翌5:00
定休日:日曜
https://www.instagram.com/bar_hogshead/
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★バー ケーブルカー
神奈川県横浜市中区山下町200 TEL:045-662-5303 営業時間18:00〜翌2:00 定休日:無休
http://www.cablecar.co.jp/jp/index.htm
★バー スリーマティーニ
神奈川県横浜市中区山下町28ライオンズプラザ山下公園 TEL:045-664-4833 営業時間17:00〜翌1:30 定休日:火曜
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