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YOKOHAMA MAP

寄席を出れば、あたかもよし、街は灯ともし頃。
すでにやわらかく色づき、潤みはじめている。

野毛あたりは散歩の黄金地帯である。図書館あり、動物園あり、由緒正しい神社があるかと思えば、べろべろに酔える居酒屋からマニアックな古書店までがある。それゆえ、大いに人は迷う。なにはともあれ、野毛らしく昼間から飲ませる店で軽くビールを始めるべきか。あるいは、人情噺でも聴きに、にぎわい座に行くべきか。人気の噺家ともなればチケットはあっという間に完売だが、二ツ目あたりが一生懸命語る噺も悪くない。そうそう、なによりにぎわい座ならば、アルコールもOKではないか。かくして、しばし計算を巡らし、にぎわい座の木戸で当日券を購って、ひととき落語を楽しんだりするのだ。寄席を出れば、あたかもよし、街は灯ともし頃。通りを越えて野毛に渡れば、すでに街はやわらかく色づき、潤みはじめている。この先は、自由である。迷うことなく歩き、おもむくまま入るがいい。いずれの店に入ろうとも、そこは野毛。酒肴にはずれなく、会計は懐にやさしい。かくして、もう一軒、あと一軒といった仕儀になるわけだが、それこそ、大人の夜の散歩の醍醐味というべきか。

にぎわい座はアルコールがOKの寄席。一階席では、背もたれの後ろに棚がついているため、缶ビールなどを置いたりもできる。とはいえ、芸を楽しみに来ているのだから、ほろ酔い程度にとどめておくのがマナーというもの。

食べる。遊ぶ。観る。
この密度の濃い360mが、戦前から続く横浜橋商店街。

歩いていて楽しい商店街というのは、最近そうざらにあるものではない。だが、そのざらにない商店街が、ここにはある。横浜橋商店街である。全長およそ360mの中に、ネイルサロンに不動産、整骨院にヘアサロン、靴屋にパチンコ、和装品店が櫛比(しっぴ)し、それらの合間に、蕎麦屋、天丼、中華料理に、うなぎ、とんかつ屋。さらに加えて、お好み焼き屋に定食屋、ふぐ料理に喫茶店と林立しているのだから、にぎやかなこと、この上ない。そしてまたにぎやかというのは、楽しく、人をひきつけるものなのだ。行き交うのは、大人たちだけでなく、地元の子どもたち、外国人の姿も。この密度の濃い360mが、横浜橋商店街といえるだろう。まだ人通りの少ない朝もよし。夕餉のしたくでにぎわう午後遅い時間もよし。散歩を楽しむ延長で、戦前から続くこの商店街を歩いてみてはどうだろう。横浜橋商店街が途切れる通りを渡れば、こちらは全長わずか30mほどの三吉橋商店街。その角には三吉演芸場があり、こちらは大衆演劇の常打ち劇場。まさに横浜の下町にふさわしい舞台ではないか。

三吉演芸場は、大衆演劇の殿堂ともいうべき劇場。横浜がハイカラなだけではなく、股旅物の創始者である劇作家・長谷川伸が生まれ育った土地であることを思い出させてくれる。